深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義11.昔懐かしふるさとの味

 

11-22.あま茶(甘茶くみ)

 あま茶は、アジサイの変種で、ガクアジサイによく似ている。図1が甘茶の葉である。若い葉を蒸して揉み、乾燥させたものを煎じて作った飲料である。図2は、葉を煎じている場面である。これを、指で天を指すお釈迦さんに汲みかけ(図3)、そのお下がりを一升瓶などに分けてもらって帰るのである。

なぜお釈迦さんに甘茶をかけるのかというと、これは、みんなで産湯(うぶゆ)をかけてあげ、お釈迦さんの誕生を祝う意味が込められているのだそうである。お釈迦さんは生まれてすぐ立ち上がり、七歩歩き、右手指で天を指し、左手指で地を指し、「天上天下唯我独尊」(てんじょうてんげゆいがどくそん)と唱えられたという伝説があり、その姿で甘茶の湯船の中に立っておられる。

甘茶の葉 煎じ 皮の甘煮
図1.甘茶の葉 図2.甘茶の煎じ(浄専寺) 図3.甘茶くみ(山江村HP)

 コーラなど甘味飲料水がなかった時代、筆者などは、幾つもの会場に出かけて甘茶を集めた思い出がある。現代では保育園や幼稚園で行われることはあっても、地域の集落単位で行われることはなくなり、このような行事があったことも、ほのかな甘みと香りを知らない球磨人が多いのには驚いた。唯一、この甘茶の味が懐かしいと便りをいただいたのは兵庫県在住の英宜さんである。

 戦前から昭和30年代ぐらいまで、4月8日のお釈迦さんの誕生日には、どこの集落のお堂でもお釈迦様の誕生を祝う甘茶くみ(花まつり)が行われていた。今は球磨郡水上村や多良木町でも花まつりは行われるようであるが、甘茶くみだけの素朴な催しではないようで、唯一、山江村浄専寺の智山堂、あさぎり町上の麓地区や須恵の阿蘇地区などで実施されている程度である。

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